福岡県の豊前市に近い築上町に住む渡辺ひろ子さんの個人紙「楽農ぐらし」は、十二年目、116号で廃刊になった。三十年ほど前、二十九歳のときからはじめた酪農を廃業にしたから、である。
　「酪農は苦悩だ」というのは、その前すでに、青森の酪農家から聞かされていたし、借金を抱えて破綻する農家はめずらしくなかった。それでも、豪毅に「楽農ぐらし」という精神の太さに、わたしは刮目していたのだ。　
　いつのことだったか、北九州市の市民集会に呼ばれていったときに、はじめて渡辺さんにお会いして、日々の生活を綴ったB4二面の通信を送ってもらうようになった。航空自衛隊築城基地での日米共同訓練に抗議して、数十人の市民が座り込んだことなども、この通信で知らされた。
　生産者乳価は、いま十年前の八割ていど、朝から晩まではたらいても、借金がふえるだけ。「水よりも安い牛乳」といわれるようになった。
　「私は今、毎日、2リットルの牛乳を買っています。ヨーグルトと飲用です」と「楽農ぐらし」改め「づれづれ草」の最新号に書かれている。生産者から消費者になってしまった悲しみ、である。
　自給率が限界になるほど農業が粗末にされ、自殺、更迭農相のあと、「ここだけはこない方がよかった」とグチって就任した遠藤武彦農相は辞任。
あぁ、ろくでもない農相に農民が苦しみ、ろくでもない首相で国民が苦しむ。


（2006年11月、院内集会にて撮影）

（鎌田慧 ・ルポライター）

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私も渡辺ひろ子さんと通信で繋がっています。
渡辺さんとは、市民の意見３０の会のニュースで
私の反戦意思表示を知って「草の根通信」 へ
何か書いてくださいという依頼を受けたのが始まりでした。
久しぶりに検索で「草の根通信」のところを訪ねました。
大切に育まれた活動は、人々の中に活き続けて
行くんだなぁ?と思いました。
その中で過ごされたお一人、渡辺さんの通信も
いろいろなところで心は繋がり平和を育くみ続けています。
（07-09-06・おおきせいこ）

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